ハセガワ1/72 愛知E13A1零式水上偵察機11型’大和搭載機’



ハセガワ1/72愛知E13A1零式水上偵察機11型’大和搭載機’です。



ゲームや巡洋艦キットに付属のを見ていれば自ずと興味は湧いてくるもので、「水上機のプラモが作りたい!」となるところ。しかしAmazonで買おうと物色しても、案外モノがありません。入手しやすいのはタミヤの晴嵐、やや品薄気味の瑞雲、他には零式水上観測機、零式「小型」水上偵察機、二式水上戦闘機など。今度でいいや・・・と流れ流れていたところ、ぶらりと某電気屋へ行くと見つけました零式三座水上偵察機。最近は通販ばっかりでしたが、たまにこういう掘り出し物が見つかるものです。



さてこのキットは何故ネット通販だと全然見つからないかというと、これがかなり古いキット。ハセガワの飛行機キットは古くて金型がガタガタなやつでもメジャー機は現行商品だったりしますが、マイナー機で絶版状態でもポロッと再生産されてくる事があります。このキットは数年前に再生産されたもののようです。











説明書。年号が平成に変わったくらいの時期から数年のうちに飛行機プラモはジェット戦闘機ばかり100機以上は組んだのですが、旧日本軍モノは当時興味が無かったので全く組んでおらず、これが初めてとなります。ハセガワのキットの説明書は2色カラーで昔から特徴的でした。



もう一枚、こちらは大和搭載機の塗装指示です。



パーツ全図。キット内容は比較的シンプルにまとめられていますが、やはりどうしても古さを感じてしまいます。



もうバリの嵐。ですがこれこそ私が昔からよく見てきた、見慣れたハセガワのキットらしい姿。



組み始めはとにかくバリを削り落とすところから始まります。ああ懐かしい。モールドは古いキットらしく凸モールド主体。勿論、全部削り落として掘り直し・・・なんてやりませんよ?



塗料はフジミみたいに箱の横に書いてあったりはしないので、店頭ではおおよそ予測して35明灰白色、57青竹色、124暗緑色は買ってきていたのですが、カーキが足りませんでした。でもカーキ持ってたような・・・と探したら出てきました。いつのだよコレ、多分四半世紀くらい前のもの。溶剤分が飛んで死んでたので復活させたらかなりの量になりました。全然使ってなかったんやな・・・



エンジンとコクピットを組みながら塗装し、仮組み。瑞雲なんかは機首かフロートの前端に重りを入れないと尻もちをつくらしいですが、この零式水上偵察機は説明書にはその記述がありません。このままだと確かにやや後ろに傾く形になります。



やっぱりこう、水平になった方がカッコイイかな?



目測で機首に5g、フロート前端に片側10gずつ入れてみました。ぶっちゃけるとフロートや本体の重量が重くなるとフロートを支持する棒が細いのでここの接着に非常に難儀するため、やらない方がマシだったかもしれません。



説明書にもありますが、キットには細い張り線は付属しないのでフロートを支持する張り線を伸ばしランナーで作ってやります。特にこのバッテンは実機の写真でも結構目立つので・・・



フロートから垂直に支持する2本ずつの棒の内側に斜めの棒を取り付けました。



と思ったら、艦載用のこの機体はカタパルトに載せる都合上、内側の斜め棒をワイヤーに置き換えているのだそう。



面倒臭いけど伸ばしランナーでワイヤーを作って左右から4本での支持に。ワイヤーを刺す穴は開いていないのでピンバイス必須。



塗装は筆塗り。上面色と下面色の境目はガサガサに塗ってそれっぽくしていますが、こういう境目は別にぼかさなくてもクッキリしていてもOK。迷彩塗装って難しいと思ってやらない事が一番だめなのではないかと。イイんだよ実機も適当なんだから適当で。



いよいよデカールですが、透明部分がやたらある部分は出来れば塗装でやってしまいたい気分。水平尾翼上面の白線と、主翼後縁の動翼の赤線はマスキングして線を引いてやりました。



デカールを貼ると一気に雰囲気がそれらしくなるのは、ハイビジ系のジェット戦闘機と同様。デカールは周辺の透明部分を切り飛ばしてやると作業性も良好。







銀で若干剥げチョロを書き込み、エナメルジャーマングレーでウォッシングして完成。



1/700のちっこい奴では分からない部分など、勉強になります。



零式水上偵察機は九四式水上偵察機の後継として愛知航空機によって開発された十二試三座水上偵察機を、昭和15年に海軍が制式採用した機体です。主に戦艦・重/軽巡洋艦・水上機母艦などに搭載され艦隊の目として周囲の偵察・哨戒を行う重要な役割を持ちます。



運用はカタパルトで発艦して偵察に出掛け、帰って来たら母艦が円運動をして水面を均したところへ着水、母艦のクレーンで吊り上げて収容します。なので海が荒れていると着水できず収容不能な事もあります。前任の九四式水偵より少し重いのでカタパルトは対応した呉式2号5型が必要で、それ以前の型のカタパルトを搭載している艦では九四式水偵を継続して使用するか、軽量小型の九五式水偵や零式水上観測機が使われていました。



艦載だけではなく水上機基地でも数多く運用され、対潜哨戒などにも使用されました。他、潜水艦搭載用の零式小型水上偵察機という機体もありますが、これは全く別の機体です。



基本型である11型に航空機搭載レーダーである三式空六号無線電信機四型を搭載した11型甲、更に対潜用の磁気探知機である三式一号探知機(KMX)を追加した11型乙のバリエーションがあり、当キットは11型乙となっています。右主翼の前と胴体後部左右に生えているアンテナは空六号電探のアンテナ。夜間運用のためエンジンからの排気口に消炎装置も取り付けられています。



前後に長いキャノピー内には三座の名の通り3名の乗員が前2人は前方を、3人目は後方を向いて乗っています。3人の内訳は前から操縦員・偵察員・電信員となり、操縦員は操縦を、偵察員は偵察と航法を、電信員は無線機の操作と機銃の操作を行います。電信員の席の目の前のキャノピーは内側上方へ巻き込むように開き、ここから7.7mm機銃を出して後方機銃とします。武装はこの他に60kg爆弾を4発または250kg爆弾を1発搭載可能。胴体下に60kg爆弾2発分の爆弾倉があります。機体強度的に急降下爆撃は出来ないため水平爆撃しかできませんが、実際に潜水艦を爆撃で仕留めた戦果もあります。爆弾倉のすぐ後方に透明パーツを使った小窓が2つありますが、これは前から2番目の席の下にあるので爆撃照準用の窓だろうか?爆撃の照準は偵察員が行います。三座の機体は九七式艦攻や天山なども同様の内訳(ただし魚雷の照準は操縦士が行います)となっており、魚雷や爆弾を積まずに偵察や航空隊の航法先導のみを行う事もあります。



何年か前に組んだタミヤ(イタレリ)のJu87G-2スツーカと。どちらも前後は短いものの左右は思いのほか大きいです。



他に日の丸をつけた機体がこれしかありませんでした。ハセガワの航空自衛隊F-104J。



1/72の飛行機キットというのは勿体ぶって組むようなものではありません。ガンガン組んでガンガン潰して良いものです。ただ90年代・・・いや80年代後半以降のキットは詳細傾向でどうしても勿体なく感じてしまうので、気軽に組むなら古いキットの方が気兼ねなく失敗できるとも言える、かもしれません。今回のものは古い割には思ったより悪くないキットだったように感じました。