フジミ1/72愛知水上偵察機 瑞雲11型/呉式二号五型射出機です。
以前どこかの段階で「水上機のプラモが欲しい!」となり、amazonで探していた時にチラホラ見つかったフジミ瑞雲。でも何か微妙に気乗りしなくて結局「今度でいいや・・」って感じで後手後手に回していたのですが、衝動買いしてきたハセガワの零式三座水上偵察機を組んで雰囲気は掴めたので次は瑞雲いってみよう!となったのが今回。機体だけのキットもありましたが折角だからと射出機も付いてる方を。
外箱。サイズは1/72の飛行機プラモとしては標準的なサイズかな?値段は2200円。評判の良いタミヤの1/72晴嵐が千円しない事を考えると高いと感じてしまうかもしれませんが、まあ射出機も付いてるし、今はどのプラモも高いし。
箱横の説明書き。
瑞雲は水上偵察機と爆撃機を統合する企図により、零式三座水上偵察機などを作った愛知飛行機によって開発された機体です。開発段階では零式水上観測機のような偵察機に戦闘機の要素も含んだ機種も統合する考えがあったため、偵察機でありながら急降下爆撃能力や、良好な空戦機動力も備えるマルチロール機が要求されましたが、さすがに厳しい要求のため開発は難航し、完成した頃は1943年ともはや戦局を覆しようのない時期となっていました。水上機としては初装備となる急降下爆撃機に不可欠なダイブブレーキをフロートの支柱に備え、戦闘機ばりに主翼には空戦フラップまで装備しています。量産化と部隊配備は1944年から行われ、第634航空隊は航空戦艦に改装中の伊勢型戦艦にこの機体を搭載する前提で訓練を重ねていたものの、艦の改装の終了前に戦局の悪化から第634航空隊はフィリピンなど各地を転戦したため伊勢型航空戦艦は伊勢・日向両艦とも結局最後まで航空機を搭載する事が出来ませんでした。220機が生産され、エンジンを換装した瑞雲12型も1945年に試作されています。
呉式二号五型射出機は巡洋艦などの中型以上の艦船から水上機を射出・発進させるためのカタパルトのうち、太平洋戦争開戦時に標準型として多くの艦船に装備されていたものです。日本の艦船用カタパルトは1928年に重巡洋艦「衣笠」に圧縮空気を利用する呉式一号一型が装備されて試験運用が開始され、軽巡洋艦「五十鈴」「由良」でスプリング式の萱場(かやば)式艦発促進装置、そして火薬式の呉式二号が軽巡洋艦「鬼怒」「神通」で試験され、火薬式の呉式二号が改良を重ねられ装備されてゆきます。空気式のものも大型機の射出用として長大なものが作られ、軽巡洋艦「大淀」(二式一号一〇型)や潜水艦「伊400型」(四式一号一〇型)に搭載されました。世界的には油圧式や蒸気式が一般的で、連合国側ではそちらがほとんど、現用では蒸気式が採用されています。呉式二号五型射出機は日本の火薬式カタパルトの最終型で、4tまでの重量の機体を射出する能力がありました。
さて今回の瑞雲は全備重量3.8tと実は呉式二号五型ではちょっとギリギリすぎる重量。このカタパルトでは全備重量3.5tの零式三座水上偵察機が限度のようで、瑞雲を射出するにはもっと大型のカタパルトが必要です。箱絵の脇にも注釈があり、瑞雲の運用を前提としていた伊勢型航空戦艦には射出重量5tの一式二号一一型射出機が装備されていました。大淀に搭載するつもりだった「紫雲」も伊400型に搭載した「晴嵐」も全備重量が4tを超える機体です。
艦船キット、中でもフジミの特シリーズなんかはパーツ数が多いとちょっとゲンナリしてくるものがありますが、1/72程度の飛行機キットだとパーツ数の多さにはむしろワクワクをおぼえるものがあります。
説明書は6つ折りにするとB5版になる横長の1枚紙。使用塗料の表に肝心な瑞雲本体のメイン色が書いて無くて、H36とクレオスの水性ホビーカラーで図中にチラッと書いてあるのみ。H36はクレオスのMr.カラーだとC70ダークグリーンですが、光沢色なので半光沢のC124暗緑色(三菱系)かC15暗緑色(中島系)の方が良いでしょう。
瑞雲本体のパーツ全図。あれ?少ない・・・この瑞雲は結構新しいキットなのですが、最初の発売は1998年だそう。この時期はフジミの暗黒期といってもよいもので、他ジャンルのキット、車プラモなどでもこの頃に出たものは結構酷いものが多いのです。私もそのくらいの時期にフジミのアルテッツァやインテグラTypeRなど色々組んだのですがもう雑だわ組みづらいわ似てないわで大変だった記憶。
呉式二号五型射出機のパーツ全図。大物パーツが多く、ディテールもシャキッとしていて好印象です。ただ・・・(後述)
早速瑞雲から組み始めてみましょう。まずは仮組み。飛行機キットの基本はとにかく仮組み。おおよその形が分からないと後で手が入らない部分があったりしますから。パーツ同士の合いは比較的良いですが主翼上面と胴体の間や尾翼周辺などややスキマが開きやすい傾向にあります。
コクピット内を説明書も見ずに何となく青竹色で塗ってしまっているところ。フロートの中には前に詰めてオモリを5gずつ入れるようになっています。車用のバランスウェイトを5gずつ前端に入れましたが、両面テープだと剥がれて後ろに転がってしまう(なった・・・)ので前端の位置から動かないようにランナーの切れ端などで固定しておいた方が良いです。ここにウェイトを入れないと上上の仮組みした写真のようにフロート後半で接地するため機首が斜め上を向いてしまいます。(ただ、カタパルトの上に載せる以外の飾り方をしない場合はオモリが無くてもカタパルト上の滑走台の上では安定しそうな気がするので、材料や目的と相談して下さい)
コクピットを組みながら仮組みを繰り返します。
どうもコクピット内のスキマが多く、特に後ろ側は胴体後部が突き抜けていて丸見えになり、塞ぐパーツもありません。気になる・・・
コクピット後部が実機ではどうなっているかググって調べてみても有効な資料が見当たらない・・・っていうか色全然違うやないですか!コクピット内は機体内部色に緑を混ぜたものが指定で、他の人の作例などを見るとオリーブドラブに近い色をしています。コクピット後端はプラ板で適当に塞いでおき、適当にその辺にあった17RLM71ダークグリーンで塗ってしまいました。フロートと嵌合する台も組みますが、指定だと黒鉄色でもっと黒い色になります。(何となく思いつきで8銀にジャーマングレーで濃いめのウォッシングという面倒な事をしています)
いよいよ機体色の塗装。まずは35明灰白色(三菱系)で下半分を塗り、次に124暗緑色(三菱系)で塗りました。忘れてて一番最後にやりましたがフロートの支柱の前縁も緑になります。色の境目は特に凝った事はせず、筆塗りのまま。
キャノピーを取り付ける前にコクピット前席の後ろにつく輪っか状のパーツはそのままだとキャノピー内側と干渉するので取り付け位置を少し深めてやる必要があります。
残りのパーツも取り付けますが、キャノピーの塗り分けの邪魔になるのでキャノピー上に生える支柱は後回し。キャノピーはマスキング地獄ですがフリーハンドだとどうしても汚くなるので頑張りましょう。排気管、何で別パーツにしたし・・・(一見面倒ですが溝にパーツを置くだけなので実は結構簡単です)
ちょっと気分転換にカタパルトの方を。塗装は面積が大きいのでスプレー塗装でやってしまいました。ただモールドが細かく立体的なので吹けてない面が出来やすく、あまり頑張ると厚塗りになるので成型色が見えちゃってる所は素直に瓶塗料でレタッチします。構造の内側に配置されるシリンダーのパーツが曲がっていて修正を要したので上写真ではカタパルト下面のパーツに輪ゴムで括りつけて接着乾燥待ちしています。大雑把な瑞雲本体に対し、このカタパルトは特シリーズっぽい細かさと組みにくさが特徴でしょうか。
説明書だと一遍に組んでいますが上面と左右と前面後面を接着してから内側をウォッシングし、最後にシリンダーなどがある下面を接着する順序が無難。
下面を接着して輪ゴムで括って乾燥待ち。あとはいくつかパーツを取り付けてこちらは完成です。
キャノピーの塗り分けを終え、デカールも貼り終えたところ。水平尾翼前縁に貼るものだけ透明部分が多くシルバリングしやすいので念入りにマークセッターでピッタリさせます。垂直尾翼とキャノピー上の支柱との間に張り線を取り付ける際、ネットで見かけた艦船キットの張り線の張り方を参考にしてみました。取り付ける対象を普通に置いて作業すると引っ張った時に外れたりたわんだりして苦戦必至なので、一方を取り付けたら対象物を縦にして張り線を次に取り付ける位置に垂らしてそこで接着すれば引っ張る必要もなくたわませずに張れる、というもの。今回の場合は垂直尾翼の前縁に細い伸ばしランナーの一方を接着して機首を真下に向けて伸ばしランナーをキャノピー上の支柱の先に垂らし、そこで接着。余った分を切って出来上がり
後回しにしていたプロペラを取り付けてエナメルジャーマングレーでウォッシングして完成。
零式三座水上偵察機を二座にしてちょっとだけ流麗にしたような印象。
搭載する爆弾は250kg爆弾×1か60kg爆弾×2とあるので翼下の小さいやつは60kg爆弾でしょうか。
エンジンは空冷星形14気筒の金星54型、1300馬力で最高速度は448km/h。
コクピットは二座で後席の後ろに13mm機銃があり、風防を開けて旋回機銃とします。
武装は爆弾と旋回機銃の他、主翼前縁に左右1挺ずつ20mm機関砲が装備されています。フロート支柱に無数の横穴がありますがここが中央を軸にして横向きに可動する事でエアブレーキの作用をする「ダイブブレーキ」となっています。ダイブブレーキは急降下中に重力によって最高速度以上に加速してしまうのを減速するためのもので、急降下爆撃能力が爆撃機を名乗る必須要素であった日本軍爆撃機の必須装備です。急降下爆撃はフライトシミュレーターをやってみるとすぐわかるのですが水平飛行しながらヒョイと爆弾を投下するのに較べ、高空から地上目標へ機首を向けて降下しながらの方が遥かに狙いが付けやすく爆弾を命中させやすい反面、地上に向かって高速で降下するため非常に恐怖であり、機首を引き上げて再上昇するために必要な高度と速度を見誤ると引き起こしきれずに地上に激突します。また狙いを付けそこなった場合、爆弾を抱えたままではその重量により引き起こしきれなくなるため爆弾を捨てる必要があり、急降下爆撃を再試行する事が出来ないため、狙いを付けられた地上や艦船からの対空砲火は機体を撃ち落とす事よりも爆撃機の狙いを外させる事の方が重要となります。(撃ち落とすと大破した機体や破片が爆弾ごと降ってきますので)
垂直尾翼には第634航空隊を示す634の文字。第634航空隊は第四航空戦隊隷下として航空戦艦伊勢に瑞雲18機、日向に彗星18機(彗星は着水能力の無い艦上機なので発進後は他の空母に着艦するか陸上基地まで飛ぶか使い捨てになる予定でした)の定数で搭載される予定で1944年5月に編成されましたが、10月には航空戦艦に搭載しない事に決まりフィリピン方面へは別々に向かい当地では水上機基地を拠点として夜間対艦攻撃などを行い戦果を挙げました。
台車に載せられた瑞雲。
呉式二号五型射出機。1/700の艦船キットでは頻繁に目にする特徴的なパーツですが、大スケールだとやっぱ、こう・・・カックイー
側面のトラス越しに見える内部のシリンダーを火薬で動作させ、シリンダーに繋がるワイヤーは内部にチラ見えする滑車に沿わせてカタパルトの前方から上面へ、そして後方へ伸びて滑走台に繋がり、この滑走台をシリンダーの動作でワイヤーを介して一気に前方へ加速させます。
滑走台はカタパルト上面左右のレールの間を前方へ滑走します。
滑走台に載せられた瑞雲。5500t型軽巡洋艦などではデリックで吊るして直接載せられますが、重巡洋艦などの大型艦ではフライングデッキ上の軌条を滑走車に載せられて移動し、カタパルト後面から滑走車の上の滑走台と機体のみが載り移ります。
いざ発艦!というワクワク感が漂います。軽巡だと駐機中もこうですが・・・
零式三座水上偵察機(右)と。大きさ的には瑞雲の方がわずかに小さく、機体形状は無骨な零式水偵に対し瑞雲は流麗な印象。
この零式水偵はハセガワの古いキットですが大和搭載機のためフロート支持がカタパルト対応型となっているのでこのように今回のカタパルトにも普通に搭載できます。
今回は瑞雲目的で買ったものの買った後でネットで調べたら滅茶苦茶評判の悪いキットだったのですが、一緒についてきたカタパルトは見慣れたパーツが詳細に見られて非常に価値がありました。まあどちらもそれなりに組みにくさはありますが、瑞雲の方も雰囲気は十分なので個人的には許せるレベル。何か毎回組みあがっちゃうと「あら結構悪く無いんじゃなくて?」って思えちゃうのがフジミ。そう思えるように手を加えるのを楽しめるようになれば、プラモ組むのってどんだけでも楽しくなりますから。
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