ハセガワ1/700 駆逐艦 三日月

ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの駆逐艦三日月です。



箱は旧来からの小さな駆逐艦キットのサイズ。ハセガワの睦月型はこの三日月の他に睦月があり、三日月は竣工時、睦月は性能改善工事後の姿となっています。



三日月は睦月型駆逐艦の10番艦。睦月型駆逐艦は峯風型駆逐艦の改良型である神風型の更に改良型であり、峯風型・神風型とは基本を同じくする準同型艦です。三日月は当初第32号駆逐艦と呼ばれていましたが後に他の同型・準同型艦同様に固有名が与えられました。同時期に竣工した艦は空母赤城や重巡青葉など。三日月は太平洋戦争においては主に船団護衛に従事し、旧式艦ではあるものの第一線級装備である61cm魚雷をもつため前線へもかり出されました。1943年までに対空兵装などの増備を行い、ラバウル方面へ進出後は同年7月のクラ湾夜戦やコロンバンガラ島沖海戦などを戦います。ラバウルに到着した初春型駆逐艦・有明と共に同月25日ニューブリテン島ツルブへの輸送任務に出発しますが、途中グロスター岬付近のサンゴ礁で両艦とも座礁してしまいます。何とか離礁できた有明は人員や物資を三日月から移して単独でツルブへ向かい、揚陸作業を終え三日月の元へ戻り曳航を試みるも失敗、そうこうしているうちに米陸軍のB25爆撃機の群れに空襲され有明は沈没、三日月も大破擱座します。29日に現場に到着した峯風型駆逐艦・秋風に人員を移乗後、三日月はその場で放棄されました。



箱下面は塗装指示。



内容は少なめ。





説明書。正方形に近い微妙な長方形の、昔ながらの説明書。よく見るとNo.94と旧ナンバリングがそのままになっています。



主要パーツ群。古いキットなのですが、出来上がりのサイズの割にはパーツ点数はそこそこあるように感じます。



ディテールはあっさりしていてリノリウム押さえなどもありませんが、ハセガワらしい緻密さはあります。同時代のキットで今でも通用するのは他ではタミヤくらい。アオシマは酷過ぎてリニューアルでほぼ淘汰され、フジミのは成型不良やバリの嵐です。



静模のディテールアップパーツ小型艦用が1枚付属。ただここから使うのはカッター2艘くらいでしょう。



それでは製作開始。船体の基本構成は船体パーツと艦底パーツ、間に入るバラスト、船首楼の甲板。



合わせは悪くありません。煙突も先に取り付けてしまいました。船体側面はディテールが何もないので舷窓をピンバイスで掘っておきました。ちょっと波打っちゃったけど・・・



リノリウム色を43ウッドブラウンで塗り、残りを32軍艦色2で。リノリウム色と軍艦色2の境目が構造物の下になってて塗装指示では分かりにくいですが、1番煙突直後くらいの横ラインになります。ググってピットロードの睦月型の塗装指示の画像を探して参考にしてみて下さい。



パーツを取り付けてゆきます。ゲート処理をヤスリできちんとやってさえいれば素直に組み立てられます。



パーツを全て配置し、細かい塗装を終えたところ。開封からここまで3時間ほどしか掛かっていません。



デカールを貼ります。側面の名前は小さ目のゴシック体で、ピットロードの長月を組んだ時にフォントに違和感があったのですが、こちらもよく似たフォント。睦月型の名前フォントは現物からこんなもんなのでしょうか?





エナメルフラットブラックでスミ入れし、ジャーマングレーでウォッシングして完成。





古いしパッと見ディテールもあっさりしてたし・・・と思ったら案外悪くない印象。





艦橋の高さが低いので水平視点だと高さ方向が物足りないと感じるかもしれません。でも改装後と違い峯風型から続く特徴的なスタイルは水平視点から見るのが一番「らしい」といえるかもしれません。



各部を観察。峯風型から続く短い船首楼〜ウェルデッキ〜三角柱の艦橋。前型の神風型から睦月型では艦首形状がスプーン型からダブルカーブ型に改められています。主砲塔は45口径三年式12cm単装砲塔。その後ろに1段下がって魚雷発射管がありますが、神風型までは53cm連装だったものが61cm三連装に置き換わりました。



魚雷発射管は3連装が2基6門ですが、カタログスペックでは魚雷12本とあります。残り6本は?というと2番煙突の左右にある箱が格納庫で、ここから更に外側の軌条を利用して発射管まで魚雷を運んで再装填します。次発装填装置ではないので装填には数時間かかります。



後部マストを挟んで前後を向く12cm単装砲塔。ここは改峯風型とされる峯風型の一番下から3番目・野風からこの形になり、睦月型まで継承されています。



艦尾には爆雷投下軌条などが確認できます。睦月型では菊月から後の4隻が掃海具を装備とあり、三日月もこれに含まれます。モールドやパーツで再現されていませんが、八一式爆雷投射機も装備されていたようです。



機関は38500馬力と峯風型から変化はありませんが、武装強化から重量が増え排水量も増加しているため速力は峯風型の39ノットから落ちているものの、それでもまだ「快速」と呼べる37ノットを保っていました。



対空兵装として貧弱ながらルイス機関銃の国産版である留式7.7mm機銃が2挺装備されています。ただキットでは再現されておらず、本来は艦橋左右のカッターの前の辺りに置かれています。留式7.7mm機銃は弾倉がザクマシンガンのようなドラム弾倉を寝かせて上に置く形(パンマガジンといいます)なので他キットの6.5mm機銃(給弾は横からの補弾板)や九六式25mm単装機銃(上から挿す箱型弾倉)では騙しづらいですね。



神風型と睦月型2艦。画像上からピットロード疾風(神風型)・ハセガワ三日月・ピットロード長月(睦月型改装後)。



神風型「疾風(はやて)」と。艦首形状がスプーン型からダブルカーブ型に変わったほか、甲板両サイドのフレアも広がり、艦首で立てた波しぶきを左右へ飛ばす能力が上がっています。



魚雷発射管が峯風型の六年式53cm連装発射管から十年式53cm連装発射管にアップデートされていた神風型ですが、睦月型では十二年式61cm3連装発射管に置き換わり、2・3番発射管は2番1基に統合されました。艦の合計門数は6門のまま。



マスト周辺から後ろはほぼ同じ構成です。



睦月型「長月」と。この長月は最終時、クラ湾夜戦のあった1943年仕様と思われます。第四艦隊事件(1935年)の後に艦橋が丸型に改装され、開戦前に魚雷発射管に防盾が装備、艦橋左右の機銃台が前方へ拡張され25mm連装機銃に換装されています。



ピットロードの睦月型の方が新しくて詳細なので煙突の付け根付近は結構な差があります。ピットロードの長月は三日月最終時とコンパチのキットなので三日月のデカールや塗装指示も付属しますが、長月とは電探など若干の装備の違いがあります。



艦尾は対潜装備を多く増備しているせいか結構印象を異にします。 長月も最後が三日月と似ており、揚陸中に座礁して動けなくなったところを爆撃され大破、放棄されています。



古いキットながらそこそこの形にはなり、初心者でも十分なんとかなる難易度です。再現年代が古いため並べる艦を選びますが、興味があったらどうぞ。ピットロードの睦月型は全部改装後なので改装前の睦月型はこれだけですから。