ハセガワ1/700 駆逐艦 睦月

ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの駆逐艦睦月(むつき)です。



箱サイズはおなじみの小さな駆逐艦キットのもの。以前組んだ三日月の元キットです。このハセガワ睦月は1973年頃からあるキットで、太平洋戦争開戦直前頃に艦橋前に連装機銃を追加、白色の迷彩塗装を施された状態の仕様でキット化され、後に三日月が竣工時の姿で追加されました。



睦月(むつき)は睦月型駆逐艦の1番艦。睦月型駆逐艦はイギリス製駆逐艦の模倣から脱し日本独自の設計となった峯風型駆逐艦の最終進化型であり、特徴としては53cmを連装3基6門装備していた魚雷を、日本海軍の駆逐艦として初となる61cm魚雷3連装2基6門に置き換えています。
睦月は「第19号駆逐艦」として1926年に竣工、1928年には「睦月」の名が与えられました。1935年の第四艦隊事件の際に同型艦である菊月と共に艦橋が破壊されたため、設計を改めて修理が行われました。太平洋戦争開戦時にはすでに旧式化していたものの、61cm魚雷を装備する事もあり第一線に投入され同型の如月(きさらぎ)・弥生(やよい)・望月(もちづき)と共に第30駆逐隊を編成しますが、開戦直後のウェーク島攻略戦時に如月が沈没し、翌年5月には補充として同型の卯月(うづき)が編入されました。第30駆逐隊は第八艦隊に属しガダルカナル島やソロモン海などを転戦します。そして1942年8月のガダルカナル島における戦いの中、米陸軍のB-17爆撃機の攻撃を受け沈没します。



箱下面は塗装図。特徴的な迷彩塗装がされていますが、元の色(軍艦色2)の上にエアクラフトグレーを乗せてゆく塗りになっています。ただどの部分に塗るのかが曖昧で、他社キットの睦月では艦橋が真っ白だったりするので面倒臭い!と思うなら普通に軍艦色2だけの塗装にしてしまってよいでしょう。



開封。キットのボリュームはそこそこ。





説明書。NO.77とナンバリングが古いままになっており、古さが伺えます。



主要パーツ群。少なくシンプルにまとめられています。



多少バリがありますが、ハセガワの古いキットとしては可愛らしいレベル。



静模のディテールアップパーツ小型艦用が1枚付属します。ただし使うのはX37の十二年式三連装魚雷発射管が2つとX40の九六式25mm連装機銃が1つ、7mカッターが2つくらいでしょうか。7m内火艇は穴の位置が違うので使いにくいです。今回はいずれも使用しませんでした。



それでは製作開始。船体部分は船体パーツと艦底パーツ、間にバラスト、船首甲板の構成。



船体側面にはディテールが何も無いので舷窓をピンバイスで開けておきました。



三日月の時に気になった12cm単装砲塔の小ささを、プラ板を切った貼ったして若干大型化。



形はピットロードの睦月型などの12cm単装砲を参考にしました。ただしあちらはやや大き過ぎるらしいのであちらよりは小さめに。



リノリウム色として43ウッドブラウンを塗り、他の部分を32軍艦色2で塗装。リノリウム色に塗る部分は資料や作例や各メーカーの説明書によって違いがあり、どれが正解かわかりません・・・ピットのは艦橋の横もだけど艦尾はもっと前までだし、某所に展示されてる大きな模型は艦首甲板にもリノリウム色の部分があるし。



パーツを乗せてゆきます。ピンセット無しでサクサク組み進められます。



パーツを一通り載せ終えたところ。ハセガワ睦月の艦橋横のカッターの下あたりの部分は竣工時のままになってるミスがあり、正しくはここは切り飛ばして甲板に直にボートダビットを置くのが正しいようです。



デカールを貼ります。手脂のせいか、シルバリングしまくりでちょっと苦戦。マークセッターで丁寧に対処します。





いつも通りエナメルフラットブラック、フラットブラウン、ジャーマングレーでウォッシングをして完成。ちょっとジャーマングレーが薄まり過ぎてつや消し不足。そろそろ新しいのを出さないと・・・





古いキットなりにあっさり気味ではありますが、ガッカリするほどではありません。





ピットロードの睦月型も船体側面のディテールは浅いので側面の見た目はそれほど劣りません。ただ喫水の高さは好みが分かれるかも。



各部を観察。艦首は峯風型とその改良型である神風型ではスプーン型だったものが睦月型からは凌波性に優れたダブルカーブ型に改められました。艦首甲板後端に置かれた主砲塔は45口径三年式12cm単装砲塔が引き続き搭載されています。その直後の一段下がったウェルデッキには神風型までの53cm連装魚雷発射管に代わり、十二年式61cm三連装魚雷発射管に置き換えられ、後に後継型の特型駆逐艦が波避けとして砲室が備え付けられるようになるとこれに倣い睦月型にも砲室が取り付けられました。



艦中央部。艦橋は竣工時は前面が尖ったオープントップの羅針艦橋に幌屋根という従来式のものでしたが、第四艦隊事件の際に強烈な波浪を被って艦橋が破壊されたため修理のついでに密閉型の艦橋に作り代えられ、同型各艦も同様の形状に改装されています。機関は峯風型から続くロ号艦本式缶4基に神風型後期艦から採用された艦本式タービン2基2軸による38500馬力の出力を持ち、峯風型からは重量が増したとはいえまだ最大速力37.25ノットの快速を保っていました。煙突は缶4基から2本ずつ束ねられているため前後に長円断面をもつ煙突が2本立っており、煙突頂部は改装により竣工時よりもカットが鋭角に変更されています。



艦後部。峯風型の最終3艦以降から3番砲塔が2番煙突直後から魚雷発射管の後ろへ移動、マストを挟んで3番と4番砲塔が背中合わせになる配置になり、これが睦月型でも踏襲されています。



右舷に回り艦尾。爆雷投下軌条が2条装備されており、旗竿の直前には掃海具がモールドで再現されています。その前方には大雑把なモールドで形状が確認しにくいですが八一式爆雷投射機(K砲)が2基装備されています。



2番煙突の左右にある前後に長い箱状のものは予備魚雷の格納庫。ここからレールに載せて前後の魚雷発射管へ魚雷を運ぶようになっています。1番2番の煙突間には2番砲塔が置かれていますが、特型駆逐艦以降では主砲が連装になったため砲塔数が減らされてここの砲は外され、代わりに艦橋前にあった魚雷発射管がこの位置に移動してきます。



対空兵装は竣工時には艦橋左右に留式7.7mm機銃が1挺ずつ計2挺しかありませんでしたが、太平洋戦争開戦直前の時期に艦橋の前に九六式25mm連装機銃が1基追加されました。ただしこの機銃追加は全ての睦月型で行われたものではなく、艦橋左右の7.7mm機銃の台を前方に拡張して25mm連装機銃を左右1基ずつ計2基に置き換えられたり、2番魚雷発射管の前に台を設置してそこへ25mm3連装機銃を置いたりしていました。睦月型のうち太平洋戦争終盤まで生き残っていた卯月では12cm砲が2基と魚雷発射管1基が撤去されて代わりに25mmの三連装2基、連装2基、単装6挺、単装機銃座2基まで増備されていました。



同ハセガワ三日月と。



艦橋や魚雷発射管に違いが確認できます。



艦中央部。煙突頂部の形状や2番魚雷発射管に違いが確認できます。



艦後部。このあたりは同じ。よく見ると三日月(奥側)の後部マストが前後逆に取りついていました・・・



ピットロード長月と。



喫水の高さがかなり違うため結構印象が異なります。前述のように艦橋前の機銃が長月では連装2基に増備されており、艦橋左右のカッターの下の構造は長月の方が正しいです。



艦中央部。ディテールの詳細さが全然違い、煙突基部などはハセガワは1段高い段の上から生えていますがピットロードは甲板の高さから生えており、キット年次の差を感じます。



艦尾。全然違うのですが、睦月型は艦尾が改装されていたり装備の違いがあったりで一概にハセガワ睦月が大間違いというわけではありません。むしろピットロードの神風型の艦尾はハセガワ睦月に近い形をしています。



奥(上)からピットロード疾風(はやて・神風型)、ハセガワ三日月、ハセガワ睦月、ピットロード長月。



前から。もうどれがどれかわかるかな?



古いなりのキットですが、安いし組みやすいのでちょっとの考証の間違いなんてわからない初心者や大体そんな形してれば十分というライトユーザー向き。一方で神経質なヘビーユーザーは発狂するキットです・・・


ハセガワは近年は主に大型艦をリニューアルしてきているのでいつかきっと駆逐艦キットも・・・と思うのですが、どうも優先度は低そうで・・・