フジミ1/700 軽巡洋艦 名取

フジミ1/700シーウェイモデルシリーズの軽巡洋艦名取です。



エッチングパーツ付きのSP-11で、基本はシーウェイモデルシリーズのNo.10、フジミ脱退前のウォーターラインシリーズのNo.65だったものです。



エッチングパーツのせいで元々は結構なお値段なのですが、投売られていたので引っつかんできました。あとは鬼怒が残ってたかな・・・



開封。シーウェイモデルシリーズのNo.32まではウォーターラインシリーズの旧フジミ担当分が移動してきただけで、No.33の那珂からがフジミ脱退後に作られたもの。名取に至っては70年代に作られたものなので内容はシンプルで、作りもかなり古さを感じます。ただ最近のフジミ特シリーズはパーツが細かく大量に分割されているので新しいあちらが楽かといえば、むしろこっちの方が集める事メインの人には易しいかも。





説明書。フジミのインストは誤記が多い傾向にあるので説明書を鵜呑みにせず、必ず現物と照らし合わせて仮組みを行う事を心がけましょう。資料を用意するのも重要です(今はググればいいだけなので便利な世の中です・・・)。



エッチングパーツの説明書。文章だけで図示されていない部分もあり少々不親切。またここにも盛大な誤記があります・・・(後述)



同じ5500t型軽巡洋艦だし那珂と似たようなもんだろ!と思っていたら全然違う構成。後部甲板上一段高くなっている部分であるセルター甲板のパーツが目立ちます。おそらくはプラパーツ部分で貧相すぎる部分を補う意図でこういう構成なのだと思いますが、那珂同様に艦橋も欲しかったな・・・



主要パーツ群。紙シールが2枚入っていましたが、船体袋詰めの方に入っていた方は何だか赤っぽく染まっています。



うん・・・ウォーターラインシリーズでは当時フジミ製はアオシマよりはマシだけどタミヤ・ハセガワに較べると大分アオシマ寄り、という認識。でも造形がとろけたりしてないあたり、良く維持はされているといえるかもしれません。



バリは多め。でもランナー内でパーツが繋がっちゃったりしてるレベルのバリがあるハセガワの古い空モノやアリイに較べたら可愛いもの。



余ってたディテールアップパーツを持ってきました。これはWパーツ。



こちらはXパーツ。Wは夕張、Xは吹雪に入ってた物だっけな? カッター&内火艇とラジアルダビッド、25mm連装機銃をここから利用しました。小船とダビッドはキット内のものでも良いのですが、連装機銃はバリが周囲に張り巡らされていて削るのが面倒臭いので素直にこちらから流用した方が楽でしょう。



エッチングパーツの部品7は名取専用とありますが切り出して船体に乗せてみると形が合いません。というかプラパーツの方とも形が違います・・・



部品5(長良・鬼怒用)を切り出して乗せてみたらピッタリ。セルター甲板の下の垂直面に貼るエッチングパーツは前側の寸法が合わないので1mmほど切る必要があります。下もリノリウム押さえのモールドを削らないと隙間が開きます。エッチングパーツの接着には普通のアロンアルフアを使いましたが、水密扉といった小パーツの接着には付けすぎるとモールドが埋まって塗装後に扉を溶接で潰したみたいに見えるので最低限の量に留めるように注意を払わなければなりません。



船体の塗装と大まかなパーツを組んだところ。セルター甲板の天板だけ後にしてリノリウム色と軍艦色2を塗り、セルター甲板を乗せてまたリノリウム色と軍艦色2を塗るようにしないと、セルター甲板右舷側の中が塗れません。14cm単装砲は那珂のものはやや組みにくかった(砲塔下面のパーツの穴が小さく、一個一個拡げる必要があった)のですがこちらのものはすんなり組めました。煙突3本のうち細い1本だけダボ穴が潰れていて合わせがズレやすく、艦橋は合わせ面がグズグズになっているものがあってヤスリをかけてやる必要がありました。



パーツを全て乗せ終えたところ。艦橋は積み重ねるだけの簡単構造ですが、窓がシールというレトロ感。実艦の写真では名取の艦橋はブリキ細工的で屋根もペラッペラ。チープな作りくらいの方が雰囲気なのかも。マストは細分化されているものの固定自体はしやすい構造で、パーツ合わせに削る必要がある事以外はあまりストレスはありません。艦橋後ろの主マストは艦橋に刺さる部分の下側の穴が貫通していないのでピンバイスなどで開けてちゃんと刺してやらないとやけに高いマストになってしまいます。穴を開ける時もついでにマストが垂直に真っ直ぐ立つよう上下の穴を合わせてやると良いでしょう。雑に組むと雑にしかならない、実に正直なキットです。



エッチング手摺りを接着。接着面にリノリウム押さえのモールドが来ると浮いて不恰好になるのでモールドを端1mmくらい全部削っておくと面倒が無いかもしれません。艦橋の後ろあたり周辺の手摺りが足りない印象ですが、手摺りパーツは長良・鬼怒用のセルター甲板上の手摺りパーツ10・11が余るのでこれを流用して張り巡らせても良いでしょう。





エナメルジャーマングレーとフラットブラウンでウォッシングをして完成。





箱を開けた時の不安を払拭するくらいの出来には仕上がります。エッチングパーツも慣れてしまえばこんな良いものはありません・・・





目線を下ろして観察。今回艦底色を塗り損なってしまい裏面が成型色のままです。喫水線付近はあまり見ないで!



各部を観察。艦首形状は機雷戦に対応したとされるスプーン・バウと呼ばれるもの。大正期に建造された駆逐艦や軽巡洋艦にこぞって採用されましたが、この形状で何故機雷対処なのかはよくわかっていないようです。艦首上部が丸く返しが無いため波を被りやすく、昭和に入ると現在では見慣れた形状のダブルカーブド・バウが主流となり、スプーン・バウ艦首をもつ艦も艦首の修理時にダブルカーブド・バウに改修された艦もあります(同じ長良型の阿武隈や、次級である川内型の神通など)。



艦橋とその後ろ周辺。一段下がったウェルデッキと連装魚雷発射管、その前に14cm単装砲、後ろに25mm連装機銃が見えます。艦橋の前面にも4連装(!)の機銃がありますが、保式十三粍四連装機銃というもので口径は13.2mm。



甲板後半のカタパルト周辺。すぐそばの14cm単装砲は後ろが開いている砲塔で作業スペースが無さそうにみえますが、砲を撃つ時は左右を向くので問題は無いのでしょう。後ろ側の14cm単装砲もマストが邪魔そうですね。カタパルト(呉式二号三?五?型射出機)は最初からあったわけではなく、新造時には艦橋の前、2番砲塔の上あたりに飛行機滑走台がありました。



艦尾右舷側。セルター甲板の右にアーケードみたいな屋根付き通路があるのが特徴で、名取では何故か長良・鬼怒とは左右逆にあります。セルター甲板後端には14cm単装砲があり、ここは1944年の改装後の最終仕様では12.7cm連装高角砲に置き換わっています。艦尾の甲板上には2本の機雷敷設軌条があります。ここはエッチングパーツが用意されていましたが那珂のもののように軌条の後端が立体的になっておらずただの板一枚だったのでプラパーツのまま。



艦尾左舷側。こちら側にはセルター甲板が屋根になっておらず、丸い張り出しがあるのみ。壁も張り出していますが砲塔の真下なので揚弾機などがあるのでしょうか。



左舷中部。煙突は川内型より1本少ない3本で、これは川内型が重油節約のために石炭/重油混焼缶の機関比率を増やしているため。船体側面にある長い大きな横穴は後部魚雷発射管の出口。改装による最終形態ではこの上に25mm連装機銃が左右舷の上に乗せられ、その間にある14cm単装砲は撤去されました。



再び艦橋周辺。最終形態では前部魚雷発射管とウェルデッキが廃され、代わりに後部魚雷発射管が4連装の酸素魚雷発射管に置き換わっています。ウェルデッキの後ろの一段高い位置にある兵装も40口径三年式8cm単装高角砲→九三式13mm連装機銃→九六式25mm連装機銃と変遷しています。新造時は艦橋の前には2番砲塔の上に被さるように飛行機滑走台があり、艦橋内に格納庫がありましたが、カタパルト設置後は撤去され、跡地に保式十三粍四連装機銃が置かれました。



前後俯瞰方向から。左右非対称のステキスタイル。



川内型軽巡洋艦の那珂と。パッと見似たような外見で船体なんか同じなんじゃね?と思っていたのですが並べてみるとウェルデッキの位置が一個分ほどズレているし、セルター甲板の上の配置も全然違いますね。



配置を逆に。全長はほぼ同じ。カタパルト上に飛行機が載っている方が那珂、無い方が名取。名取の方はカタパルトを無理やりその位置に置いた感がありますが、那珂の方はまだいくらか無理の無い配置に見えます。



艦首形状の違い。名取は前述のようにスプーン・バウですが那珂はスプーン・バウをやめた頃に竣工(関東大震災で破損して造り直したため川内型の中でも完成が遅かった)したため建造中に設計変更しダブルカーブド・バウの艦首形状をもっています。



幅もほぼ同じ。ただ那珂の方がキットが新しいので詳細な印象です。



元が古いキットで少々苦労する部分もありますが、エッチングパーツ様様で時間が掛からない割りにそこそこの見た目に出来ます。 似たような艦ばかりというのもどうも・・・というのもあるでしょうが、似て非なるものであるのが軽巡洋艦。5500t級軽巡洋艦でも球磨型〜長良型〜川内型と違いはあり、同じ型の中でもそれぞれ違う経緯と運命を辿るので違いを楽しむ面白さもあります。極まった人は同じ艦でも改装によって違う各年代型を作って集めちゃうくらいですから。しかも今はそれを簡単に再現できる時代なのです。