フジミ1/700 駆逐艦 浦風

フジミ1/700特シリーズの駆逐艦雪風/浦風です。
まずは1隻目を浦風として組む事にします。



外箱はウォーターラインシリーズの軽巡くらいのサイズ。高さ方向は薄め。



一見すると雪風の単品キットにしか見えませんが、小さく「浦風との2隻セット」とあります。これ絶対雪風だけだと思って買って開けたらパーツ重複してる!?って慌てる人多数だと思います。何とかならんか。



雪風についてしか書かれていません。可哀そうな浦風。
浦風は陽炎型駆逐艦の11番艦。太平洋戦争開戦のおよそ1年前である1940年12月15日に竣工、同型の「磯風」「浜風」「谷風」と共に第17駆逐隊を編成、軽巡洋艦「阿武隈」を旗艦とする第1水雷戦隊に属し、太平洋戦争開戦となる真珠湾攻撃には南雲機動艦隊の護衛として参加、その後も各地を転戦します。激戦を幾度となく経験しますが1944年11月、サマール沖海戦の後本土へ帰還する戦艦「金剛」「長門」「大和」を護衛しますがその途上、台湾海峡において米潜水艦「シーライオン」の襲撃を受け、金剛は雷撃により沈没、長門を狙って外れた魚雷が命中し浦風も沈没します。僚艦は金剛乗員の救助に追われ、その後で浦風の元へ向かった時にはわずかな浮遊物しか残っておらず、浦風の乗員は全員戦死となりました。



開封。バラストを省略した旨のピラ紙があります。









説明書は縦に長い1枚紙。塗装指示や使用塗料欄にリノリウム色が無く、相変わらず説明不十分かつ不親切な説明書です・・・



パーツ全図。1隻分だとこれだけになります。連装・3連装機銃のF部品は1枚のみで2隻で共用しますが、それ以外は1隻につき1枚ずつ。
しかし、単装機銃のH部品2枚が入っていません…



モールドはビッシリと入っており、その濃度は他社の陽炎型のキットを凌ぎます。



それでは製作開始。まるで戦艦キットのような船体・艦底・甲板前後の構成。



バラストは入っていませんがバラスト押さえのパーツは甲板の土台にもなるので取り付けておいた方が甲板上の配置物を置いていく時に圧力を掛けても安心できるでしょう。塗装前に艦首の小パーツと1番煙突&1番魚雷発射管の土台のパーツは接着しておいてもよさげ。



リノリウム色として43ウッドブラウンを塗装。ちょっとリノリウム部分と鉄板部分の境界が曖昧で迷いますが、大体で。



32軍艦色2で残りを塗装。艦底を29艦底色で。



1番煙突周辺から後ろにかけてパーツを配置してゆきます。小さく細かいパーツが多く、出来は良いのですがあまり初心者には薦められない細かさ。慎重に。また特シリーズはその細かさの上でパーツ合わせが非常にタイトで余裕が無いのでなおの事。



艦橋は後部の下からはめ込むパーツを忘れないように。(忘れました)
前マストはそこを貫通して下まで突き刺さるのですが、やはりタイトで余裕が無いため無理に押し込もうとするとマストが折れます。(折りました)
しかしホントまあよくもここまでパーツを細分化してくれたな・・・って感じで組んでいる途中は恨み言が出るレベルなのが特シリーズ。でも苦労の甲斐はちゃんとあるので頑張ります。



パーツを全て載せ終えたところ。左舷側の艦中央部の防弾版2枚は説明書だと変な位置に指示されていますが、左右対称に置いた方がスマートかな?
単装機銃は仕方ないので全オミット。雪風1945として組む場合と浦風1944として組む場合とでの違いは単装機銃の数の差だけですが、それでも最低10個が必要。



煙突のつや消し黒やレタッチなどをして完成間近。





エナメルフラットブラックとジャーマングレーでウォッシングして完成。デカールは旗だけありますがモチベーションが下がっちゃったので省略。こんでいいや。





単装機銃をオミットしても結構な密度感。





抜きの方向の関係で省略されがちな甲板構造物の側面もビッシリモールドなので側面の見栄えも良好。



各部を観察。とはいえ陽炎型はもう3隻目なので軽めに。主砲は50口径三年式12.7cm連装砲(C型砲塔)。その後方には艦橋前に増設された九六式25mm連装機銃が1基。マストの途中には増設された22号電探が確認できます。



艦中央部。1番2番の煙突のそれぞれの後方には九二式61cm4連装魚雷発射管が1基ずつ置かれ、1番用は1番煙突の左右に、2番用は後マストの下に次発装填装置があります。これ自体は初春型駆逐艦から装備されていますが、陽炎型からは機力により装填速度が数秒にまで短縮されました。



艦後部。後マストの前面に13号電探が装備されています。その基部と後方にかけては2番砲塔がありましたが改装によりてっきょされ、代わりに九六式25mm3連装機銃がタンデム配置で2基置かれています。その後方には3番砲塔、爆雷装備が並びます。



右舷に回り艦尾。艦尾には爆雷投下軌条が2条設置されており、その前方にはY砲(九四式爆雷投射機)と装填台が設置されています。キットではその周辺にあるデリックなども細かく再現されています。



再び艦中央部。甲板の舷側に所々立てられている板は防弾板で、太平洋戦争の後半になって陽炎型の生き残っている艦に増備されていたようです。単装機銃をオミットしているので用途が分かりづらくなってしまっていますが、単装機銃の射手を防護するためのもののようで、防弾板の内側は単装機銃の設置位置となっています。



艦前方。艦橋の左右舷にも防弾板が設置されています。ここの位置には元々カッターとボートダビットがありましたが、撤去されて単装機銃が設置されていました。



3メーカーによる陽炎型の比較。上(奥)からピットロード不知火、アオシマ磯風、フジミ浦風。ピットロード不知火はディテールアップパーツとエッチングパーツが付属する豪華版ですがエッチングパーツは連装機銃2基だけを使用し、残りのエッチングパーツはアオシマ磯風に流用しています。アオシマ磯風は元々簡易なキットでディテールが寂しいためピットロードのキット付属の単装機銃その他のパーツでデコレーションしています。



艦首〜



艦中央部。



艦尾。値段の安さ、組みやすさなど初心者にもお薦めできるのは断然アオシマですが、省略が激しく盛り付け改造ベースという印象。フジミは対称的に非常に緻密ですが2隻セットのため値段が高めで組むのにも慣れが必要なため最低でも何隻か組んでからにした方が良いでしょうね。ピットロードは組みやすさも詳細さも中間的なバランスの取れた好キットではありますが値段はちょっと高め。また陽炎型の竣工時〜1942あたりまでは良いのですが1944以降などの末期仕様だと防弾板などが別売りエッチングパーツ頼みになり、それが無いと物足りないというジレンマが発生します。



ちゃんと部品が揃っていれば組むのは大変なれど完成後の満足度は最高なキットでしょう。一方で初心者にはパーツ飛ばした、失くしたの嵐になりやすく、2隻セットを予備部品付きとみても絶対的な組みにくさが壁。ただし初心者であろうと恐れずこんな難物でも組み上げれば高い経験値が得られると思いますので、プラモ作りが嫌にならない程度に積極的に挑んでみていただきたい。