タミヤ1/700 軽巡洋艦 夕張

タミヤの1/700ウォーターラインシリーズ、軽巡洋艦夕張です。



ワシントン海軍軍縮条約によって大きな艦の建造を制限された帝国海軍のとった道が、「小さな船体に重武装」という方向性。その極端な例がこの夕張です。旧式ゆえに小型であった天龍型(排水量3230t、全長143m)と同等のサイズの船体(排水量2890t、全長140m)に5500t型軽巡洋艦と同等の武装をもつ艦です。条約破棄後は搭載兵装に見合うよう船体は大型化されてゆくため結局は駆逐艦でさえ末期の秋月型では夕張に近いサイズ(排水量2700t、全長134m)となってゆきますが、実験的に1艦だけ建造されたこの夕張は当時としてはセンセーショナルであり、設計者の平賀穣と共に世界に名を知らしめた艦でした。



とまあ、かなりのメジャー艦なのでプラモの方は古くからあり、90年代にリニューアルされているようです。とはいえあまりボリュームは無く、駆逐艦キットに近い印象。奥側の袋入りが主要キットで、手前の袋入りはディテールアップパーツ。





説明書。タミヤらしいわかりやすい説明書ですが、よくみるとやはり吹雪の時と同様に甲板上のリノリウム色の指定が省かれています。



それでは製作開始。主要パーツはランナー2枚で、構成もシンプル。



シンプルですが、他社のびっしりと入ったモールドを見た後では少々アッサリ気味というか、船体側面なんかは何のモールドもありません。凝りたい人だけ凝ればいいのですが、単純に組むだけだと物足りないかも。



艦底パーツにバラストを乗せ、船体パーツと貼りあわせます。艦底パーツの前後に穴が開いてるのは空気穴?バラストは上下貼りあわせでしっかり固定されるのでテープなどで留めておくまでもありません。パーツの合いも良好。



リノリウム色はいつも通り43ウッドブラウンですが少し趣向を変えて、41レッドブラウンを混ぜてみました。



単に暗くなっただけだったので29艦底色を少々、紫っぽかったので蛍光レッドと蛍光オレンジも混ぜ混ぜ。今回はこれで勘弁しておきましょうか。



説明書の指定が無いので甲板上のモールドで解釈し塗装。甲板上のリノリウム色の部分はリノリウム押さえのモールド(横方向に走る一定間隔の線状の凸モールド)があり、そうでないところは境界がわかりやすいので難しくはありません。



32軍艦色(2)を塗装。一段高くなっているところの後半のモールドにも塗っていますが、ここは艦橋パーツで隠れるので塗らなくてもOK。何となくで。



艦底色で底面を塗装。



甲板上にパーツを次々載せてゆきます。吹雪と同等の手間でさっさと組みあがります。内火艇などは甲板上に置いてから吊るすアームを脇に添える構成なのでむしろ吹雪より簡単。初心者でも安心の親切設計。



でもやっぱり物足りないので柵を自作して多少盛り付けてみます。説明書にも柵や張り線が書かれていますので。ランナーをライターで炙って伸ばし、「伸ばしランナー」を作ります。懐かしい・・・



細切れを沢山切り出します。



甲板のフチに接着剤を塗って細切れを立てて・・・



立てた細切れに接着剤を塗って長い伸ばしランナーを外側に乗せます。



2本乗せて、上に飛び出てる立てた細切れを切り飛ばして出来上がり。ちょっと伸ばしランナーが太かったのと、柵の高さが高いので次はそれを踏まえます。



船体中央側面のは細すぎて接着剤で溶けまくってしまったので船体後半の柵は太すぎず細すぎず。エッチングパーツにはどうしても細さ細かさでは敵いませんが、思いつきでやるにはまあいいかな・・・もうやりたくないけど。張り線もやろうかと思いましたがもう勘弁、気力が尽きました。





エナメルジャーマングレーでウォッシングして完成。フラットブラウンで錆の表現もしてみましたが、ちょっとやりすぎた印象。もっとささやかにした方が自然。





旗はキット付属の紙シールですが、まあいいかな・・・これ時間が経つと剥がれちゃうのですが、対策は剥がれてからでいいや。





でもやっぱり柵があると引き立ちますね。エッチングパーツの使用を強く勧めますが・・・



ディテールアップパーツは錨だけ使いました。これだけは無いと寂しい。

 

ディテールはアッサリしているものの非常にカッチリしていてパーツの合いも良く、バリもほとんどありませんでした。このあたりはさすがにタミヤ。



手前からピットロード長月、タミヤ吹雪、タミヤ夕張、フジミ那珂。サイズ的に綺麗に並びます。





駆逐艦に毛が生えた、とよく言われる夕張もこうして並ぶと軽巡洋艦してますね。ここに秋月型を入れるとどう見えるかわかりませんが・・・





艦橋の背の高さはやはり軽巡洋艦のそれでしょう。14cm連装砲塔が駆逐艦の12.7cm連装砲塔に似ているのが駆逐艦に見えてくる理由のひとつか。



初心者でも簡単に組める良キットではありますが、手を入れる余地が多い分そのまま組んだだけでは物足りないでしょう。できればエッチングパーツとセットで。